2026/08/03 23:57

先日、ネパール出身の登山家ニルマル・プルジャさんと同行者の方々が、ブロードピーク登攀中の雪崩により亡くなりました。心よりご冥福をお祈りいたします。

このたびの訃報に接し、どれほど経験を積み、体を鍛え、装備や計画を整えても、人は自然を支配することはできないのだと、改めて感じます。

制作中の書籍『ヨクキク山ヨガ』は、山に親しむ人たちがもっと自由に、末長く山を楽しめるよう、体と心を整えるヨガを紹介する本です。

この本の企画書の最初に私はこう書きました。

「山岳遭難事故を減らしたい」

雄大な日本アルプスを擁する長野県は、多くの登山者が全国から訪れます。それゆえに、毎年多くの山岳遭難が起きています。

山を生業にしているわけでもない私が、遭難事故を減らしたいなどと大きなことを口にするのはおこがましいかもしれません。

それでも、本書のメインテーマである「山を好きな人に、いつまでも山を楽しんでもらいたい」という言葉の奥には、山で苦しい思いをする人が少しでも減ってほしい、という願いがあります。

先日インタビューをさせていただいた山岳救助隊の方は
「自分が好きな山で、みんなにつらい思いをしてほしくない」
と話してくれました。

私は一介の登山者ではありますが、山も、山が好きな人も好きなので、やはり同じことを思います。

山岳遭難の原因はさまざまです。その中でも、体力不足は無視できない要因だということです。日頃から運動が習慣になっている人は、たまに山に入っても問題ないかもしれません。ですが、普段体を動かしていないのにいきなり山に登るのは、きっと誰にとっても大変です。

装備を整えるのと同じように、日頃から体を整えて山へ向かう。その習慣が、多くの人に自然なものとして根づいてほしいと思っています。

どうにもならないことがあるからこそ、できることはやるべきだと感じているからです。

とはいえ、私自身、最初から安全や準備について深く考えながら山を歩いていたわけではありません。

30代のはじめ頃、私は妻とネパールへトレッキングに行きました。最初に訪れたのは人気コースのアンナプルナサーキット。行く先々の村で、ダルバートに舌鼓を打ちながら一ヶ月弱かけてコースを歩ききったそのあとで、私は一人ランタン渓谷へ行きました。そこで登ったツェルゴ・リは、忘れられない山になりました。

ツェルゴ・リは標高にして約5000m。ガイドブックに載っているような一般的なトレッキングルートではありますが、積雪期には状況が変わります。

季節は4月頭で、装備はほぼほぼ夏山用。雪はそれなりに積もっていたけれど、直前に訪れたアンナプルナサーキットで雪深いトロン・パス越えをして調子にのっていた私は、意気揚々と一人歩きだしました。

頼りは宿のおじさんに書いてもらった手書きの地図とコンパスのみ。トレースは残っているから先行者は数名いそうだけど、道中誰に会うこともありません。心細くはありましたが、でも、あんなに自由を感じた山旅はありませんでした。

時に腰まで雪に埋まりつつ、何度も道を間違えつつどうにか辿りついた山頂は、強風で立っていることもままならず、一枚写真を撮るのが精一杯。ですが、あの光景は一生忘れないと思います。
今振り返れば、装備もルートの確認も不十分で、体力だけで登り切ったような山行です。

決して褒められたものではないのはわかっているけれど、それでも、当時の自分にとっては、そのときの自分にできる最高の冒険だったと思います。


私は今年46歳になりました。一般的には体力が衰えはじめる年齢です。

ですが、上述したような、山登りに精を出していた十数年前と比べても、心身ともに今が一番健康だと感じます。

無茶をしたいと思うこともなくなって、きっとこの先も山を楽しむことができると思っています。

それは、とりもなおさずヨガの練習のおかげです。

これを読んでくれている皆さんも、この先ずっと山を楽しむことができるよう、一緒にヨガをして体を整えてほしいと思います。
そのためにも、まずはこの本をしっかりと作ります。

出版予定は9月下旬。今は写真の入稿期限に追われてバタバタです。
ご予約いただいている皆さまは、本がお手元に届くまで今しばらくお待ちくださるようお願いいたします。